アジア・アフリカ地域研究情報マガジン 第269号
■■■ November 2025 第269号 ■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
ASAFAS INFOrmation Magazine
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■【発行部数1,144】■■■■■
__今月号の目次 Contents__________________
□ フィールド便り…………. 装甲車に刻まれた血と歌
□ メルマガ写真館…………. 海上サッカー
□ お知らせ………………. 2025年度 第2回 ダイキン・インドの将来研究会
□ 最近の出来事…………….. Facebook・X(旧Twitter)情報
□ 編集子より
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■ フィールド便り Letter from the Field
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「装甲車に刻まれた血と歌」
JEA GE(東南アジア地域研究専攻)
今年9月、フィールドワークのためにジャカルタを訪れ、思いがけない光景に出会いました。ちょうどモナス東広場では、インドネシア陸軍の創設80周年を祝うイベント「TNI AD FAIR 2025」が開催されており、私もその場に居合わせました。
モナス広場には、軍の装甲車や戦車などの多様な兵器がずらりと並び、舞台では迷彩服姿の軍人たちが陽気に踊ったり歌ったりしていました。観客の中には子どもたちも多く、軍人と一緒に舞台で踊ったり、装甲車に乗って記念写真を撮ったりする様子がとても印象的でした。
しかし、私がこのイベントに足を運んだとき、内心はとても緊張していました。というのも、到着直前のジャカルタでは、大規模なデモが発生していたからです。もともとは分配の不公平に対する抗議として始まったデモでしたが、無関係のバイクタクシー運転手が警察機動隊の装甲車に轢かれて亡くなるという事件をきっかけに、警察への不満が一気に高まり、議会と警察に対する暴動へと発展しました。
こうした事態の中で、治安の悪化を受け、国軍も一部地域で秩序維持のために出動していたと報道されています。これにより、国軍も市民と対立する現場に立つようになりました。そうした状況のなかで、このような陸軍創設記念のイベントがどのように市民に受け止められるのか、不安な気持ちで私は広場に足を踏み入れました。
ところが、そこで目にしたのは、私の予想を覆すような光景でした。軍人と市民が笑顔で触れ合い、ともに踊り、歌う――そんな平和的で開かれた空気が広がっていたのです。日が暮れても舞台ではパフォーマンスが続き、観客はリズムに合わせて手を振り、楽しげに声を上げていました。私も気づけばその群衆の中に立ち、舞台を見上げながら、奇妙な一体感と高揚感を味わっていました。
政治・経済的不満や社会的緊張が渦巻く中でも、人々は笑い、踊る。そして軍もまた、威圧ではなく親しみをもって民と向き合おうとする――。今、装甲車の傍らで歌う人々の中には、もしかすると、半月前に装甲車による殺害事件を目撃し、怒りを抱えて暴動に加わった人がいるのかもしれません。
写真1 装甲車に乗って記念撮影を楽しむ子供の姿
写真2 ステージで軍人と市民がともに踊り、歌を楽しむ場面
写真3 日が暮れても舞台でパフォーマンスを続ける陸軍兵士と、リズムに合わせて手を振る人たち
(上記フィールド便りに関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/pfbid02VQZR
eJW15bBvHZqf2s7HMPhemLFhFASFcmDgvxLFSKNPMK1j1EAPPkzyjpADoEstl
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■ メルマガ写真館 Photo Gallery
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「海上サッカー」
吉位優作(東南アジア地域研究専攻)
海外に長期滞在していると、調査地で見つけた「お気に入りの食べ物」が、心の支えになります。私にとってそれはハイガイ(Kerang Dara)です。ハイガイは干潟に暮らす二枚貝の一種です。この貝が好きだと話していたら、知人が「近くにハイガイがたくさん採れる村があるから行こう」と誘ってくれました。その村は、海に打った杭の上に高床式の家々が並ぶ、いわゆる海上集落でした。しかし、少し内陸側に歩いていくと、見下ろした先にあるのは水面ではなく陸地です。よく目を凝らしてみると、陸だと思っていたその一帯はハイガイの身を剥いたあとの貝殻が積み重なってできたものだったのです。こんなに採れるのかと驚きながら、貝殻でできたコートでサッカーをする子供たちを眺めつつ、その日の晩ごはんを心待ちにしていました。
写真1 貝殻の上でサッカーをする子供
写真2 インドネシア・スマトラ島パニパンの海上集落にて。家の周りにも貝殻がたくさん
写真3 私のお気に入り、Kerang Dara
(上記メルマガ写真館に関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/pfbid0yWJY
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(過去のメルマガ写真館は、次のURLからご覧いただけます。)
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/photoessay/
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■ お知らせ Announce
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□ 2025年度 第2回 ダイキン・インドの将来研究会
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「ナレンドラ・モディ政権下のインド経済の現状と課題」
講師:佐藤隆広(神戸大学経済経営研究所・教授)
日時:2025年12月1日(月)15:00~17:00
場所:京都大学 吉田キャンパス 総合研究2号館 4階大会議室(AA447)
形式:ハイブリッド(対面+Zoomによるオンライン参加)
参加申し込みフォーム:https://forms.gle/rE5ZcWZm51GqPD8j8
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■ 編集子より From the Editor
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協力:京都大学 アフリカ地域研究資料センター
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