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アジア・アフリカ地域研究情報マガジン 第217号

■■■ July 2021 第217号 ■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
ASAFAS INFOrmation Magazine
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■【発行部数 947】■■■■

__今月号の目次 Contents__________________

□ フィールド便り............. 美術というフィールド
□ メルマガ写真館............. まわす、遊ぶ。
□ お知らせ................... 履修証明プログラム、入試日程
□ 講演会・セミナー情報....... アフリカ公開講座
□ 最近の出来事............... Facebook・Twitter情報
□ 編集子より
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■ フィールド便り Letter from the Field
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「美術というフィールド:
  異なる角度からのグローバル化のための定点観測」
中村 融子 (アフリカ地域研究専攻)     

 ベナンはコトヌーから車で一時間ほどのアートセンター、ル・サントルの風景(写真1)。キング・フンデックピンクというベナン系アーティストを事例に現代美術を研究している私にとって、ベナンのアートシーンは重要なフィールドです。現代美術の展示場、アーティスト・イン・レジデンス施設(*)、さらには図書館など、多様な機能を持ったアートセンターは、00年代半ばからアフリカの諸都市に次々と誕生しました。日本で美術の場といえば、多くの方が大きな美術館などを想定されるかもしれませんが、アフリカの現代美術シーンでは、これらの柔軟な機能を持つ美術施設が地域に根を下ろす動きが活発です。それらの人や場は、ローカルなアートエコシステム(生態系)という言葉でも説明されます。
 一方で、パリやロンドンでの大規模なアートフェア(**)も私のフィールドの一つです(写真2)。最近日本では、現代美術作品の「投機」的側面への注目が高まっていますが、アートマーケットは本来、作品の売り買いを通じて、作品を価値づけたり、歴史に残したりする場です。アフリカのアーティストやキュレーターは、依然西洋中心的なグローバルなアートワールドに参加し、自らの文化を自らの目線で表象したり、社会問題を提示したり、美術の文法自体を描き変えたりします。美術を知ると、普段当然のように受け入れている「おしゃれ」とか「洗練された」感覚が、どう歴史的に形成されてきたかを知ることができます。そしてアートワールドは、今まさにその新しい美的な認識が作られる闘技場なのです。
 海外渡航ができない現在も、私は日本をフィールドに同じで研究を続けています。というのもキングは、陶土を素材とするアーティストで、備前焼を学んだことをきっかけに、日本の陶芸にも深い関わりを持つからです。先月は、キングが「陶芸の森」のレジデンスを利用して滞在した、信楽で調査を行いました(写真3)。信楽といえば中世以来の古窯ですが、その近現代には、窯業産地としての発展、ヨーロッパの前衛美術の流れを汲む戦後前衛陶芸、戦後アメリカの現代陶芸など、様々な文脈が流れ込んでいます。実はあの《太陽の塔》の裏の黒い顔も信楽で焼かれたものなんですね。
 美術研究においてフィールドワークはあまり一般的ではありませんが、「当たり前」を取り巻く隠された水脈を見つけ、多様な価値観を持つ人に出会い、新しい角度から世界を眺める眼を養う、非常に有効な手法であると感じています。

*  アーティスト・イン・レジデンス=滞在型制作プログラム
** アートフェア=ギャラリーたちがブースを出展する展示販売会のようなもの。カンファレンスなどのイベントが付随することも多い。

写真1:ル・サントルは、「図書館の脱植民地化」や「古美術返還」にも取り組み、総合的に現代美術の制作や鑑賞の素地を作っている。

写真2:アフリカ現代美術のアートフェア、1-54 London 2019にて。1年間で、ニューヨーク、ロンドン、マラケシュの三か所で開催。ロンドンでは毎年10月、世界的なフェア        Frieze London が開催されるのと同じ時期に開催される。(October Gallery: Romuald Hazoum?, Eddy Kamuanga)

写真3:陶芸館(美術館)やレジデンス施設である創作研修館を持った複合施設である滋賀県立陶芸の森。陶芸館付近から信楽を見下ろす。

(上記フィールド便りに関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/4289635501082769


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■ メルマガ写真館 Photo Gallery
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写真3

「まわす、遊ぶ。」
川畑 一朗(アフリカ地域研究専攻)

 ザンビア都市部の郊外を歩いていると、車輪のついた手作りおもちゃを押したり、引いたりして遊んでいる様子がいたるところで見られます。これらのおもちゃは、家の周りや路上に落ちているペットボトルや紙パック、ゴムひもや木の棒、市販のおもちゃの残骸などから子どもたちによって作られます。子どもたちは車輪のついた自作おもちゃを押したり引いたりして走りまわり、日が暮れるまで夢中で車輪をまわし続けます。
 輪上のものをまわす遊びは、ザンビアだけでなく世界中多くの場所でみられ、日本でも江戸元禄のころから桶や樽を固く締めるための箍(たが)や、自転車のリムなど輪上のものを木や鉄の棒で押してまわす路上遊びがみられます。5年ほど前にはハンドスピナーが流行しましたが、ものをまわして遊ぶというのは人間のさがなのかもしれません。


写真1:車輪を押してあそぶ男の子。市販のおもちゃの車輪とペットボトルキャップ、木の棒が組み合わせ作られています。男の子が着ているTシャツには、レーシングゲームに登場するオフロード車両がプリントされています。

写真2:自作のおもちゃを引いて走り回る子どもたち。カメラを向けると立ち止まってしまいました。おもちゃを引いて走り回るのは子どもたちだけの世界で行われることかもしれません。

写真3:子どもたちの自作したトレーラー。乳飲料のプラスチックボトルと紙パックから作られており、前方には木の棒に結ばれたゴム紐が取り付けられます。

(上記メルマガ写真館に関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/4289632581083061

(過去のメルマガ写真館は、次のURLからご覧いただけます。)
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/photoessay/


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■ お知らせ Announcements
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□ 令和3年度 アジア・アフリカ地域研究 履修証明プログラム 募集
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 アジア・アフリカ地域の生態・社会・文化・歴史・政治・経済に関するファーストハンドの知見を体系的に説明し、同時にフィールドワークという研究方法の面白さ、楽しさを具体例に基づいて理解できるようになっています。社会人受講生の便宜を図るため、週末(土・日)に講義と演習を行う、約半年間のプログラムです。

出願締切:2021年8月26日(木)17時(必着)
募集要項URL:https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/rishushomei/


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□ 2022年度 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 入試日程
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◆ 第1回入学試験
出願期間:令和3年8月19日(木)~8月25日(水)17時必着
試験日程:令和3年9月8日(水)、9日(木)

*募集要項等の詳細は下記研究科ウェブサイトで公開しています。
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/admissions/application/


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■ 講演会・セミナー情報 Lectures, Seminars
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□ 京都大学アフリカ地域研究資料センター主催
   2021年度 アフリカ公開講座
  「工学研究者、アフリカへ行く!“MNGDプロジェクト”の挑戦」
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 アフリカでは、古来より人やもの、情報のやりとりを様々に発達させてきました。そのなかでも、物理的な往来を容易くする「道」の存在は欠かせません。航空機や高速道路による長距離移動やSNSなどの情報通信が多用されるアフリカで、ともすれば村と村をつなぐふつうの「道」の重要性は看過されてきました。今回のアフリカセンター公開講座では、この「道」に注目して2019年からエチオピアで共同研究をはじめた工学研究者たちの挑戦をとりあげます。
 SATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)「特殊土地盤上道路災害低減に向けた植物由来の土質改良材の開発と運用モデル」、通称MNGDプロジェクトの活動について紹介しながら、みなさんと一緒にアフリカの道について考えてみたいと思います。


◆第1回 2021年10月16日(土)15:00-17:00(開場14:30)
  講師:木村 亮 「アフリカに大学を造る」

◆第2回 2021年11月27日(土)15:00-1700(開場14:30)
  講師:安原英明 「アフリカで地盤環境工学を考える」

◆第3回 2021年12月18日(土)15:00-17:00(開場14:30)
 講師:福林良典 「アフリカで住民と道普請する」

◆第4回 2022年 1月22日(土)15:00-17:00(開場14:30)
 講師:亀井一郎 「アフリカの土壌を改質する」

◆第5回 2022年 2月19日(土)15:00-17:00(開場14:30)
 講師:澤村康生 「在来植物でアフリカの道を直す 」

*この公開講座は、京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科の
 「令和3年度 アジア・アフリカ地域研究履修証明プログラム」の
  一部として提供しています。

* 各日ともに、オンライン(Zoom)、および、
  京都大学稲盛財団記念館3階 大会議室での、ハイブリッド形式でおこないます。

*お申し込み
「お名前(ふりがな)、ご住所、メールアドレスなどの連絡先、受講希望講座」を記して、下記のいずれかへお送り下さい。会場での受講を希望される場合は、その旨お書き添えください。無記入の場合は、オンライン受講希望として扱わせていただきます。

1) E-mail:manabiafrica[at]gmail.com
          ([at]は@に変更してください)

2) 郵便:〒606-8501 京都市左京区吉田下阿達町46 
         京都大学アフリカ地域研究資料センター 公開講座係               

3) FAX: 075-753-7831

各回、開講日の前週金曜までにお申し込みください。
お申し込みいただきましたら、5日以内に受講受付と受講料振込のご案内を返信いたします。入金確認後、当日までに会場での受講案内、あるいは参加URLをお送りします。講座の映像は、開講日以降もオンラインで見ていただけるよう、アーカイブを公開します(期間限定)。

*詳細
https://www.africa.kyoto-u.ac.jp/archives/9731

*共催
京都大学アフリカ地域研究資料センター、SATREPS「特殊土地盤上道路災害低減に向けた植物由来の土質改良材の開発と運用モデル」プロジェクト共同主催

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■ 最近の出来事 Recent Topics
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□ Facebook・Twitter情報
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■ 編集子より From the Editor
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 手元にあるありあわせのものを使って、手のなかでくるくると軽快で自由にものをつくりだす。今月号のエッセイからは、そんな情景が浮かんでくる。しかもそれは、世界の中心が求めるようななにかではなく、むしろ見向きもされないかもしれないほどの地味で微細なものであり、にもかかわらず、ときに周縁から世界の見方をずらし、攪乱していくような、ひどく美しい行為だと思う。
 遠く離れた憧れの地にいずれ出会い直すために、まずは夏の国内調査に出かける学生たちを見送りながら、かれらが従事していることとは、まさにそういった活動ではないかと考える。途方に暮れそうなほどの困難のなかで、それでも自分の関心に真摯に向き合い、感覚をたよりに現場に巻き込まれて、一回性のかけがえのなさと格闘しようとするたくさんの逞しい背中に、私はいつだって勇気をもらっているのです。(Y.K.)


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編集/発行:
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)広報委員会
ASAFAS キャリア・ディベロップメント室
ASAFAS 次世代型アジア・アフリカ教育研究センター 
    臨地教育・国際連携支援室
協力:
京都大学 アフリカ地域研究資料センター
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