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第187回 「メルマガ写真館」

第187回「メルマガ写真館」
「詩を紡ぐ、詩が紡ぐ。」
北嶋 泰周(グローバル地域研究専攻)

私が調査している大阪市西成区では、あいりん地区の住民(通称:おっちゃん)を対象とした句会が頻繁に行われています。ここで詠まれた詩や俳句の幾つかは、西成警察署より1975年から発行されている『あいりん労働者の詩集』に掲載されてきました。1961年から幾度となく勃発してきた「釜ヶ崎暴動」とは異なる、警察当局と(元)労働者の暖かな繋がりが垣間見えます。現在では労働者以外の投稿も可能となっており、私もその中の一つである「ひと花センター(ひと花句会)」の10月句会と11月句会に参加してきました。

私のお気に入りは「11月の季語」をテーマに10月句会で詠まれた「かまがさき 勤労感謝 皆お酒」です。詠み手のおっちゃんは、中学校を卒業した55年前からあいりん労働者として生活を始め、現在は単身高齢で生活保護を受けている方です。おっちゃんは「毎日が勤労感謝やけどな!」と補足し、参加者がワハハと笑う光景は印象的でした。

11月句会には、「ひと花センター」として改築される前の保育園で55年前に保育実習を経験した女性の方も参加されていました。その女性は、奈良少年刑務所で詠まれた詩をカレンダーにして熊本などの被災地へ寄贈する活動や、『あいりん労働者の詩集』が紹介された報道番組を偶然見たことがきっかけで「ひと花句会」に興味を持ったと語ります。

あいりん地区は「怖い」あるいは「危険だ」というイメージを持たれがちです。しかし一方で、詩や俳句を通して様々な人が共有していく感性、さらに詩集による予期せぬ他者の取り込み、そして無限大に広がっていく人間の繋がりを見ることもできました。

人が詩を紡ぎ、また詩が人を紡ぐ。私自身も次第にあいりん世界へ紡がれていくようでした。

写真1:自分の詠んだ句を紹介する「ひと花センター」利用者の方々。
写真2:「ひと花センター」の入り口。建物には保育園の面影が残っています。
写真3:『あいりん労働者の詩集』第41号の冊子。

(上記フィールド便りに関する写真は次のFacebookでご覧ください。) https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/4749361535110161

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