ASAFAS 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
インターネット連続講座
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  第五回 「地域研究で 開けゴマ
東南アジア地域研究専攻 古川久雄(生態環境論講座) 
 
 

Contents

地域研究への誘い

地域

フィールドワークと直観的観相

<自然地域>の相と<メタ地域>の相

<寄生メタ地域>の暴走に歯止め

1、地域の単位−今西錦司の示唆

1-2、今西錦司の生物社会の見方

1-3、岩田慶治の指摘

1-4、生物のホメオスタシス

2、高谷好一の「世界単位」

2-2、「世界単位」の概念

2-3、腑に落ちない点

3、地球単位

3-2、「地域種社会」と「地球単位」

3-3、<寄生メタ地域>

4、地域研究の存在理由

  

地域

 地域は自然環境の中で、動物としての人間が作り上げて来た縄張りと考えてもよいだろう.縄張りの様子は所変われば品変わるで、地球上には千差万別の相がある。そうなるのは、自然そのものが無限の変化体である上に、人間という動物がライオンや象などの強く賢い動物よりもさらに強く賢く、環境に対する適応能力も抜群で、地表に人間の出没しない土地は無いほどだ。更に人間はその精神の内面的な深さと変異も、自身で見当がつかない程のものだ。表層意識の下には深い混沌がある。その潜在意識も、生、死,恐怖、喜び,災厄といった非日常の出来事に接して噴出する。縄張りの様相はこうした普段目に見えないものも微妙に関係している。
 だから,縄張りとしての地域は千差万別である。違いに着目すると、個々の村町,個々の家族、個人個人が違った地域ということにすらなる。しかし、他方、人間は群れを作る動物である。個の内面に何を秘めていようと、人間生態の基本に群れ社会がある。群れて生きる課程で自然の把握と生存・増殖の方法にその群れ独自の性格がうまれる。つまりその群れ独自の文化や制度が生まれる.そうしたものとして地域をとらえられる。
 この考え方は和辻の風土概念や、戦前のアメリカに生まれた文化領域概念と合い通じるものがあるかもしれない。地域を地図上に図示してその落ち着きを吟味する我々の方法はとくに、文化領域の方法と近いのかも知れない。しかし違いも大きい。和辻の風土類型はわかりやすく、文章も魅力的なのだが、3類型間の相互作用を見る意識がまったく無い。別々の花瓶に花を活けるに似ている。現代の地球の紛争や環境の問題は違った地域間の相互作用―文化伝播や侵略を含めて−が最大の原因になっている.単に一地域の美をめで、醜を嘆く姿勢ではだめである。

2 熱帯多雨林の島嶼部東南アジアは今も焼畑が広い。暗い林床は草が全く無い。抜開すると良い稲畑になる。 2年目、草が殖えると放棄する。 林が成長すると草は消える。 この繰り返しだ。自然の慈悲を人は呼吸している。

(スマトラ島ジャンビ州)

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