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アジア・アフリカ地域研究情報マガジン 第241

■■■ July 2023 第241号 ■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
ASAFAS INFOrmation Magazine
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■【発行部数 1,081】■■■■■■

__今月号の目次 Contents_______________

□ フィールド便り................... ナイロビの夏目漱石
□ メルマガ写真館.................. 高知県安田町の闘鶏
□ 最近の出来事................... Facebook・Twitter情報
□ 編集子より
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■ フィールド便り Letter from the Field
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「ナイロビの夏目漱石」
平野雄太(アフリカ地域研究専攻)

「Are you Japanese?」
 ケニアの首都ナイロビの中心地にある本屋で、ケニア人と思しき小柄な妙齢の女性が突然、私にそう尋ねてきました。眼鏡の奥にある双眸は爛々と輝き、底知れぬ知性を湛えています。
 饒舌多弁。彼女の語り口が、私に喋りかけてきた理由を詳らかにしました。どうやら彼女は、日本文学に強い関心を抱いているようです。三島に大谷崎、川端、村上春樹、吉本ばなな…日本文学好きの外国人が敬慕の情を叫んで憚らないお歴々の名が、彼女の口からも発せられます。
 「私の中では西洋文学は神の視点から世界を俯瞰しているような印象なの。でもね、日本文学は小窓から世界を覗き見るような印象があるのよ。特に谷崎なんて…」
 「水を得た魚」という言い回しは、この時の彼女を描写するために存在しているのではないでしょうか。私は天翔ける奔馬に鞭打つ術を持ちませんでした。
 「最近読んだ日本文学で面白かったのは、夏目漱石の『こころ』だったわ!」
 喜色満面の笑みで漱石を語る彼女。日本から遠く離れたナイロビで、まさか漱石の『こころ』について語らうとは、予想だにしていませんでした。NA・TSU・ME。異国の地でその官能的な三音を、舌の上で転がすことの快美感は得も言われぬものがあります。
 「『こころ』の登場人物に関して面白い解釈があるのですが、「先生」を幕末以後の日本、「お嬢さん」を西洋文明、「K」を東洋文明になぞらえる読み方があるんですよ。つまり、幕末以後の日本は、東洋文明と西洋文明の狭間にありながら、最終的には前者を犠牲にしながら後者に接近していった。明治日本と漱石自身が抱えた葛藤が、『こころ』には反映されているという解釈です」
 適切に伝わっていた確信はありませんでしたが、衒学趣味的な性向も手伝ってか、私は彼女に拙い英語でそのような趣旨のことを何とか伝えようとしました。すると、思いの外、私の言葉が幾分、彼女の胸を打ったようです。
 「そうなのね…漱石がそのとき抱えていた問題は、今のケニアにも通ずるところがあるのかもしれない。私たちケニア人、特に若い人々は、伝統文化を軽んじる一方で、欧米の文化に染まろうとしているし…うーん、そう考えると「先生」が最終的に自死を選んだことは特に興味深いわね…」
 聡明な彼女のことでしょう。ケニアという国が抱える矛盾について深く思うところがあったのでしょうか。彼女は遠くを見つめながら、私の言葉をじっくりと咀嚼してくれているようでした。

写真1: ナイロビ市内にある国立図書館'Maktaba Kuu' (スワヒリ語で「大きな図書館」の意)

(上記フィールド便りに関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/pfbid02KgsvENP4ikH7hzi2r1cU57SZesHmyDdLo4JyGahPFdjW7Lyxii72pnikF619d8Q2l

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■ メルマガ写真館 Photo Gallery
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「高知県安田町の闘鶏」
福田亮太(アフリカ地域研究専攻)

 高知県安田町は軍鶏の飼育が盛んに行われている地域です。軍鶏とは江戸時代にタイから輸入され、我が国において闘鶏用に育種改良されたニワトリです。軍鶏には闘いにおける「強さ」が求められるため、犬や猫などのペットとは異なり、飼い主でさえ手が付けられないような攻撃的で荒々しい個体が好まれます。安田町ではそんな軍鶏を闘わせる闘鶏大会が毎年12月から6月にかけて、毎週日曜日に行われています。試合が行われるのは「中芸軍鶏組合安田場所」という闘鶏場で、行政によって建てられた全国的にも非常に珍しい闘鶏専用施設です。軍鶏による迫力満点の闘いを見に、ぜひ安田町へ足を運んでみて下さい。

写真1:中芸軍鶏組合安田場所
写真2:試合中の様子
写真3:闘鶏用の軍鶏

(上記メルマガ写真館に関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/pfbid02ggnmGXBhtxYBJKBKaJPc64oXHdb7zBXmsGY63x7AX7R9eww5Mf2XDmxRpf3pxBbPl

(過去のメルマガ写真館は、次のURLからご覧いただけます。)
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/photoessay/

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■ 編集子より From the Editor
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祇園祭のお囃子と熱気に包まれた三連休が終わり、京都もいよいよ夏本番の暑さを迎えています。そんな中、今週末からタンザニアの調査地に渡航します。タンザニアは今、乾季の真っただ中。一年のうちで朝晩の気温が最も下がる季節を迎えています。特に調査地は標高が1000メートルほどあるため、朝晩は冷え込み、フリースと寝袋が必須です。京都のこの蒸し暑い感覚のままパッキングをしてしまったら、大切な物をうっかり忘れてしまいそうです。タンザニアの生活を思い起こしながら、パッキングにいそしむ日々です。       (M.S.)           

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協力:
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