ASAFAS 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
インターネット連続講座
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  第六回 「〈開発〉という体験 スマトラの村の歴史から
東南アジア地域研究専攻 加藤剛(地域進化論講座)
 
 

Contents

1. 〈開発〉というもの

2. コトダラム村

3. 好きやねん

4. 〈真昼の闇〉と20世紀の始まり

5. 「年寄りも若返ったとき」

6. 〈クーポン時代〉のヒーローたち

7. イスラーム知識人の誕生

8. 公のために

9. スカルノのインドネシア

10. スハルト開発体制と村落

11. 消費される開発

12. 宴のあとに

13. 〈地域研究〉ということ

  

4.〈真昼の闇〉と20世紀の始まり


 
クワンタン地方の20世紀は、真昼の闇、1901年に中央スマトラで観察された皆既日食で幕を開けた。同じ年にはこの地方の首長が亡くなり、1905年にはオランダ植民地支配が始まっている。その数年後には、小農ゴム栽培が開始された。植民地化が一段落する1900年代後半、川下のマチから中国人商人が植民地行政の中心となったパシールに到来し、商店を開くようになった。ゴム栽培の開始は、比較的自給自足的であった村の経済を一挙にゴムの世界市場に結びつけ、遠い市場におけるゴム価の高低が村に直接影響を及ぼすにいたる。仲介役を担ったのはパシールの中国人商人だった。コトダラムの物質生活も精神生活も、ゴム以前と以後では、大きな変容を経験することになるのである。

稲作が主として女の仕事であるのにたいし、ゴム採取は男の仕事である。

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