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2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

  第二十回 「環境保全と環境破壊−寡欲と強欲の系譜」
 
 

Contents

1 環境破壊と植民地支配

土地との付合い方
2 雲貴高原の棚田

3 収穫季の棚田

4 新世界の大農場

5 ブラジル東北部のサトウキビ地帯

6 カナダの小麦地帯

林との付合い方
7 産米林−タイ系民族の開拓方式

8 破壊を招いた大規模開発

9 カナダ先住民の林

10 伐採会社の理屈

動物との付合い方
11 インド

12 カナダ

生態破壊の業
13 ラオスの不発弾

14 地球温暖化

  

8 破壊を招いた大規模開発

 スマトラ、カリマンタンの沿岸部に広大な泥炭湿地林がある。正確には、あった。泥炭湿地林は瘴癘の地であるが、現地住民は周りの川筋や河口に住んで、賢明な利用を行ってきた。ロタン、ニボンヤシ、沈香、樹脂類、蜂蜜、マレー熊、銘木などを採集・狩猟していた。材木会社も択伐方式で木材資源を保全して来た。感潮帯では潮汐灌漑水田や、園地も開いていた。1960年代以降、世界銀行と官庁テクノクラ−トが近代的開発を指導して、大規模開発を行った結果、泥炭は急速に分解し、下の汽水性堆積粘土が乾いて硫酸を放出し始めた。ジャワ、バリからの政府移民は開拓地と高床家を貰って移住したが、作物が何もできず、離村者が多い。自然と移民の痛ましい破壊に終わった例だ。写真はジャンビ州ブルバックデルタの移民地。水路壁に浮いた黄色の膜は土地全体に広がり、硫酸が放出されている証拠だ。支給された家は高脚がなくなり、藁葺きになり、次第に潰れて行く。